DOLLS

『振リ回サレルノハ、モウタクサン』

『私ハ都合ノイイ人形デシカナイ』

「そう、あなたたちはお人形。寂しさを
紛らわせるために生まれてきた。」

『私ダケヲ求メテ欲シイ』

『ソウイウ人ノ所有物ニナリタイ』

「大事なものはいくつもあるから、それは難しい。」

『ナラバイッソ希望ヲ持ダセナイデ』

『中途半端ナ優シサハイラナイ』

「そんなものは、私だっていらない。」

暗闇の中に浮かぶ、たくさんの蝋燭と人形たち。
悪く言えば利用され、良く言えば必要とされた。

「私はもう、疲れてしまった。」

埃まみれの床に、仰向けに倒れこむと
人形たちと同じ気持ちで、目を閉じる。

「本当、一人でいるほうが気が楽ね。
わかる気がするわ。・・・・私も。」

ないがしろ

彼からキャンセルのメールが入った。

私はきっと一番ではないし、
一番大事な人と会えるなら私は
二の次にされてしまうのだろう。

何番目かはわからないけれど、
事実はそういうことなんだと理解した。

彼は自由な人だし、私と一緒には
なれない運命なのかもしれない。
彼と出会えただけでも感謝すべきなのかな。

でももしも誰かと会えると言うことだけで
私との約束を反古にしていたと言うのなら、
彼はその程度にしか私を見てなかったということで、
彼はその程度の人間でしかなかったということだ。

安らげる暖かい場所というものは
なかなか見つからないものね。
私がそこにいれたとしたなら、
誰よりも大事にするというのに。

自分にはその自信の根拠がある。
なぜなら以前限界を超えて、
愛情を注ぎ続けた経験があるからだ。

二度と使うことがないのかもしれないけれど。

擬音精舎の鐘の音？

みょーん

ばいーん

ぽよぽよー

ぱにょぱにょー

ぺもぺもー

もっちもち

むにょろりん

むにょろりおん

はにょられん

にょっきにょっき

むゆー・・・・・・。

精神異常者の傍らで

部屋に戻ると真っ暗のままで朝から変わっていない。
破れた壁紙に割られた鏡。ベッドに眠る異物。

家具は傷だらけで俺の身体にも包帯が巻かれている。
どうしたらいいんだろうどうしたらどうしたらどうしたら
考えている内に疲れてしまったので荒れ果てた
部屋のまま片付けずに自分のベッドで眠りにつく。

怒号で目が覚めると異物が暴れていた。
おかしいなぁ愛する人が眠っていたはずなのに。
何とかなだめすかしても取り付くしまもない。

ああ、今日もこいつの家族を呼ばなければいけないのか。
プライベートも新婚生活もあったもんじゃないな。
医者は役に立たないし何年こんなことを続けなければならないのか。

うるさいなぁ。怒るか泣き喚くしか出来ねーのか。
約束は守らないし自分で生活をぶち壊しにしてそれで
苦しいって言いながらわがまま言ってんだから世話ないわ。

理解に苦しむどころか理解できるかこんなもの。
死んでしまったほうが楽なのかなぁ。誰も頼りにならない。
かわいそうだけで面倒見れたら世話ないよ。

愛情がなかったらとっくに見限って見捨ててる。
刃物まで向けられたらどうやって愛していたのかも忘れてしまう。

誰にも言えないし当事者にも周囲の人間にもわかりゃしない。
こんな人間を愛してしまった、ただそれだけのことで
人生をぶち壊しにされた人間だけがわかる世界。

無責任にいい加減なアドバイスと効きもしない薬だけで
金とってやがるクソ医者をブチ殺してやりたい。
馬鹿みたいにプライドだけは高いんだ。治せないくせに。

一緒に住んでみたら医者どものアドバイスがどれだけ無力な
ものなのか痛感するだろうよ。患者のためにも廃業にした方がいいよ。
役立たずが。詐欺と変わらないじゃねえか。どうにかしてみろよ。

怒るなって？お釈迦様でもないのにどうやって平静でいろと？
こんな馬鹿どもに無駄金払うだけ馬鹿らしい。治せないなら
医者を名乗るな。人の人生台無しにして殺人と変わらない。

ああ、また暴れてやがる。いつまで勝手なことしてんだ。
感謝の欠片もない。人生やり直したほうが早い気もする。
毎日毎日、地獄絵図の繰り返し。見せてやりたいよ。

この世の全てに。

子供を預かった。

「座布団ぐしゃーｗ」

親戚の子供を預かった。

目の前で山積みされた座布団に突っ込んだ
風呂上りの子供。トランクスとTシャツで座布団にまみれる。

「おいおい、あんまりいたずらするんじゃないぞ。」

人の話を聞いているのかいないのか、ウフフアハハと
座布団にまみれながら笑っている。その姿がどうにも
可笑しくて、こちらまで笑ってしまう。ウフフ。アハハ。

「座布団の海なんです。すいません。」

「なんで謝ってるんだよｗせっかく風呂入ったのに埃まみれになるぞ。」

ビシッ！と敬礼のポーズを取った子供。

「埃まみれじゃありません！座布団まみれです！」

「そこにこだわるのかよｗほらほら片付けてやるからどいてろ。」

部屋の隅に逃げて、体育座りで座布団を俺が片付けているのを
何が楽しいのか、笑顔で眺めている。子憎たらしいなぁ・・・・ｗ

俺は別段子供が好きではない。が、何故か子供に好かれる。
俺なんかよりもっともっと子供好きな奴なんていっぱいいるのに。
俺の両親にしろ、とある友達にしろ、子供を見るだけで顔が
笑顔に変わりくしゃっと潰れたようなにやけ顔で喜ぶ。

どちらかと言うと俺は特に強い父性本能？もなく、
寄って来ればかわいがるし、向こうが興味なければ
こちらも話しかけることもなく、普段通りに過ごす。

子供だって人間なんだから、いろんな奴がいるし、
ある程度の年齢の差は考慮するが、一人の人間として
接することにしている。だから子供にとってすれば
そんな俺の態度が自然体に見えるのかもしれない。

俺が座布団を片付け終わると、待ってましたとばかりに
座布団に飛び込む子供。勢い余って頭を壁にぶつける。

「大丈夫か？すごい音したぞ。」

覗き込むと、無表情のまま寝転んでいたが、俺の顔を
見るなりニタァと笑って、エヘヘヘヘヘと照れ笑い。
起き上がらず、片付けた座布団の上でもみくちゃになる。

「しょうがねぇなぁ・・・・ｗ」

子供が興味なくなったところで片せばいいかと苦笑しながら、
なんだか可笑しくて転げまわる子供を眺め続けた。